夫が強引に家を出て行きました。これって悪意の遺棄ですよね?

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探偵-栃木-170728

 

『悪意の遺棄』という言葉があります。
離婚請求を行ったり、離婚のための調停等を考える方も、よく耳にすれど「何のことかよく分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、この『悪意の遺棄』について、ご説明します。

自分のしている行為が「悪意の遺棄なのかな?」と思ってご覧になっている方は、離婚裁判・離婚調停において「悪意の遺棄」と判断された場合は、それはそれは圧倒的に不利な状態となりますので 覚悟してお読みになって下さい。

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『悪意の遺棄』という言葉に馴染みがなくても、「悪意」と「遺棄」という2つの単語の意味はご存知でしょう。
「悪意」は悪い意図、「遺棄」は捨てたり放置したり、自分の手から放すようなことを表します。

 

離婚請求において、『悪意の遺棄』が表すのは、夫婦生活の協力をしない一切の行為のことです。
婚姻関係の継続において不可欠な、夫婦の同居や協力扶助などといった義務を怠ることを示しています。

明確な事例の定義はありませんが、例えば生活費を渡さなかったり、日常家事などの分担の放棄、夫婦として協力的ではない場合、また、一方的に出て行ったり追い出したりするような行為も、『悪意の遺棄』にあたります。

このように、わざと夫婦関係を破綻させるような行為全般、または、夫婦生活が破綻すると知りつつ何も行動しないこと、などが『悪意の遺棄』に該当するでしょう。
では、「主人が強引に家を出た」場合、これは『悪意の遺棄』にあたるのでしょうか?

例えば転勤などの正当な理由がなく、また相手配偶者の同意もなしに家を出て、そのまま帰宅しない場合、これは『悪意の遺棄』に該当します。
また相手の居場所が不明だとしても、当人の意思で家出をして戻ってこない場合は、同居の拒否をみなされ、『悪意の遺棄』だと解釈できます。

しかし、突然消息を絶つというシチュエーションのすべてが、『悪意の遺棄』に該当するわけではありません。
事件・事故に巻き込まれた等の、望まない形で家に戻れない状況も考えられるからです。

ですので相手の行為を『悪意の遺棄』と断定するためには、強引に家を出て言った理由や居場所、それまでの関係性などの説明が必要になる場合もあります。
相手に浮気相手がおり、浮気相手と暮らし始めたために帰ってこない場合は、『悪意の遺棄』となるでしょう。
ただこの場合、この別居に関して夫婦間で合意しているか、合意しておらず一方的なのかが重要となります。

仮に浮気行為によって既に夫婦関係は破綻しており、協議の上に別居している場合は、『悪意の遺棄』ではなく浮気という『不貞な行為』を理由に、離婚請求を行えます。
『悪意の遺棄』は広義で扱われるため、相手の行動だけでなく、自分の思わぬ行動が『悪意の遺棄』とされてしまう場合もあります。
『悪意の遺棄』の意味すること知っておくことで、無用なトラブルを避けることが賢明です。

ではここで、どのような行為が『悪意の遺棄』に該当するのかをまとめました。
考えられる別居と『悪意の遺棄』について、代表的な行為を下記にご説明します。

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相手が合意なく家を出た

夫婦間の合意がなく、正当な理由もないのに家を出ていくという行為は、『悪意の遺棄』にあたります。

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相手が浮気相手と暮らしていて、帰ってこない

浮気相手と暮らしている場合、これも立派な『悪意の遺棄』となります。
ただ、そもそも浮気という行為が『不貞な行為』にあたります。
そのため、婚姻関係が完全に破綻していて夫婦間で合意の上で別居している場合は、『悪意の遺棄』とはならず、『不貞な行為』として離婚請求できます。

よくあるなケースとしては、浮気をしている側(有責配偶者側)が精神的苦痛やその他わけの分からない理由を主張し強引に家を出て、実は他の異性と過ごすためでした。といったものです。

他の異性の存在や、その交際期間(家を出る前から交際が始まっていた)を証明できれば、これこそ典型的な『悪意の遺棄』となります。

この場合、相手側の言い分は、ほぼ100%「別居してから異性と知り合った」というのがお決まりの言い分ですので、別居以前から交際している証明が出来るかどうかがポイントとなります。

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家を追い出された

一般に、家を追い出されたことによって発生する別居は、家を追い出した側に『悪意の遺棄』が認められます。

この「追い出す」という行為は、直接的な言動以外にも認められる場合があります。
例えば、相手配偶者を配偶者として扱わない、DVに該当するような暴力や侮蔑があったなど、同居が耐えられず、出ていくしかない状況を作っただけでも、追い出したと同義になります。

このため、出て行った側が自ら出て行ったのかではなく、そうなった原因がどちらにあるかで判断されます。
いつの間にか当事者が『悪意の遺棄』を行ったことになる場合もあり、このような場合、当事者間の主張は対立しがちです。
家庭裁判所は事情を考慮し、どちらがより有責性が高いかを判断することになります。

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『悪意の遺棄』にならない別居

次のような理由によって、悪意なく行われる別居は、『悪意の遺棄』には該当しません。

・単身赴任
・夫婦が一時、冷却期間を置くためにと別居に同意をしていること。
・出産や療養のため
・育児や教育のため
・家を追い出されたため
・正当な理由による同居の拒否

「正当な理由によつ同居の拒否」は、先述した浮気や暴力などによって、婚姻関係を破綻させた人間の配偶者が、相手に対置して同居を拒む場合を示します。
これは、有責性が低い側に、婚姻関係が破綻しているにもかかわらずその後の同居を強制するのは酷だ、と解されるからです。

このような場合の家出や同居の拒否は『悪意の遺棄』に該当しないことは、覚えておくとよいでしょう。

以上のように、別居にはいろいろな形があり、その中の一部が『悪意の遺棄』に該当しています。

往々にして、有責性が高い者に『悪意の遺棄』が認められます。

「配偶者が強引に家を出た」原因が自分にないと判断されれば、配偶者の行為が『悪意の遺棄』に該当すると結論付けられるでしょう。

 

また、『悪意の遺棄』が意味するのは別居だけではありません。

『悪意の遺棄』は、広く夫婦生活の協力をしない一切の行為のことを指します。
これは、婚姻関係の継続において不可欠な、夫婦の同居や協力扶助などといった義務を怠ることを示しているのです。

別居以外の『悪意の遺棄』に該当する行為について、詳しくご紹介していきます。

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「夫婦の協力扶助」の意味

協力扶助とは、夫婦が生活を維持していくために必要な、お互いの努力のことを指します。
具体的に言えば、労働と生活費のことです。

世の中の夫婦の多くは、当事者間で職業労働と家事労働の分担を決めています。
職業労働から得られる生活費と、内助の功としてある家事労働で成果を成り立たせているのです。
そのため、どちらか一方が欠けたとしても生活に支障をきたしますし、それが悪意によって欠けたのであれば、『悪意の遺棄』とみなされるでしょう。

このような夫婦の協力扶助の『悪意の遺棄』には、主に以下のようなものが該当します。

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・生活費を渡さない

最も明確に『悪意の遺棄』を問われるのが、相手配偶者が生活できないと知りながら、生活費を渡さない場合です。
夫婦には生活保持義務があり、お互いが同程度の生活を送れるように、必要な生活費は必ず分担しなくてはなりません。

同居・別居を問わず、相手の生活が困難だということを知りながら生活費を渡さない行為は、『悪意の遺棄』に該当します。

例外として、婚姻関係を浮気などで破綻させている人間が相手に生活費を求めることは、許容されません。
社会通念上、そのような身勝手な請求は認められるものではなく、家庭裁判所においても、有責配偶者への生活費負担に対しては減額や否定を認めることがあります。

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・労働の放棄

夫婦の協力扶助として、労働は2種類存在しています。
生活費を稼ぐための職業労働と、生活していくうえで欠かせない家事労働です。
このどちらを放棄することも、『悪意の遺棄』と解されます。
ですから、就労能力を持つのに何もせず働かない場合、家事を放棄して生活に支障がある場合、これは『悪意の遺棄』になります。

もっとも、『悪意の遺棄』には必ず「悪意」が必要です。
そのため、努力して就職活動をしているにもかかわらず就職先が決まらなかったり、食事を作る時間がどうしてもなくてテイクアウトで食事をとること、平日は疲れているので掃除はせず、休みの日に掃除するなど、常識の範囲内で悪意がないものは当然、『悪意の遺棄』には該当しません。

更に、相手が家事に非協力的な場合でも、直ちに『悪意の遺棄』とは解釈できないので注意が必要です。
あくまで、相手が悪意を持って家事を手伝わないことが『悪意の遺棄』であり、相手が不満を持っているというだけでは、該当しないからです。
離婚請求で『悪意の遺棄』を根拠とする場合、必ず相手に「悪意」があったことを証明しなくてはなりません。
そのため、どのような経緯でいつから遺棄がはじまったか、遺棄を相手が解決しようとしなかったことを、相手が合理的に弁明できなければ、『悪意の遺棄』は認められやすくなります。

広い意味のある『悪意の遺棄』を知っておくと、困った事態になったときに、きっと役に立つことでしょう。

 

 

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